全段電流帰還・上下対称コンプリメンタリプッシュプル
全段電流帰還・上下対称コンプリメンタリプッシュプル
SP192ABは、全経路を、高速・広帯域の電流帰還型・全段上下対称コンプリメンタリプッシュプル・オペアンプで統一。全ての電流帰還アンプには、モノリシックIC(AD812ARZ)を用いて小型化・高精度化・省力化を推進しています。パワーアンプ最終段はスピーカーを駆動できるよう、デュスクリート構成の、AB級コンプリメンタリプッシュプル・ブースターが追加されます。これらによってD級アンプとは一線を画す性能を体感できます。
電流帰還トポロジー
理論上無制限のスルーレート(立ち上がり速度)を持っているのが電流帰還型アンプです。スルーレートに起因する高域の高調波歪(TIM歪とも呼ばれる)が少ないのが特徴です。1段増幅でありながら高いゲインを確保できるため位相遅れが小さく、広い帯域で大きなNFBをかけられるため超高性能になります。電流帰還アンプの出力段は、ダーリントンA級プッシュプル出力で、負荷駆動力に優れています。
上下対称コンプリメンタリプッシュプル
上の回路図は、美しい上下対称回路ですが、通常は以下のように、上下非対称回路です。上下対称回路は次のようなメリットがあり、高級オーディオ回路や、MHz帯の高速を要求されるアンプではしばしば用いられます。
- 電源ノイズに強い(上下非対称回路は+/-どちらか一方が電源ノイズに弱い)
- スルーレートの対称性に優れ(パルス信号を印加したときの立ち上がりの勾配と、立下りの勾配が揃っている)、高域の歪が少ない
- 入力バイアス電流が小さいので、DCアンプ化しやすい。
- 実質並列回路なのでS/Nが3dB、ゲインも3dB向上する。
30W大容量DDコンバーターによる低雑音電源
左右独立電源フィルタ+安定化電源
SP192ABのオペアンプへの給電は、ローカル電源フィルタを左右独立配置しています。クロストーク(回路間の干渉)と電源からの雑音混入を阻止します。
4系統独立グラウンド
小電流、大電流、電源2次、電源1次の4ブロックに分離したグラウンドによって、大電流系、スイッチング系の電流が小電流アナログ回路へ侵入するループを遮断します。電源、グラウンドは大面積のベタ配線でインピーダンスも最小です。
超低雑音・大容量スイッチングDC/DCコンバーター
SPA192ABは、スイッチングDC/DCコンバータによって、外部電源を再度交流に戻して、電源を再構築します。またこの方法によってACアダプタや電源ラインの影響を殆ど受けない設計になっています。同時に大幅なサイズダウンを実現しています。最大出力は30Wで、5W+5WのSP192ABにとっては十分に余裕のある電源で、低インピーダンススピーカーを楽々駆動します。一見ノイジーに思えるスイッチングDC/DCコンバータですが、微小電圧の計測回路に応用できるほど雑音性能は良くなっており、そのノウハウを応用しました。主な低ノイズ化のテクニックは以下の通りです。
- 6次π型フィルタ、シールドを組み合わせ低雑音化。
- アナログ部分の電源はDCアンプに最適な、正負2電源で、高級アンプと同等の設計です。
AB級コンプリメンタリプッシュプル6dBパワーアンプ
AB級
SP192ABは、小型でありながらスイッチングアンプ(D級:デジタルアンプ)ではなく、AB級のリニアアンプ設計です。アンプの小型化・高効率化という観点ではD級アンプのほうが優れていますが、歪率、S/N比、チャンネルセパレーション、周波数特性、位相特性などにの性能面ではAB級アンプはD級アンプを圧倒します。パワーや効率を取るか、クオリティを取るかの選択において、SP192ABはクオリティを重視したわけです。
6W+6Wのパワー、29dBのゲイン
SP192ABは6W+6Wというパワーです。一見少なそうなパワーですが、4~10畳程度のリスニングルームでは十分な音量を体感できます。6Wという小パワーなのでSP192ABのゲインは29dBと少なく、S/Nで有利です。
0dBパワーアンプ
SP192ABは、電流帰還オペアンプを2段通過するだけのシンプルな構造で、初段のプリアンプで23dBのゲインを稼ぎ、2段目のパワーアンプは6dBという構成です。これによって、出力段に大きなNFBがかかり、少ないアイドル電流でも十分な歪率性能を達成することができました。UIA5200のパワーアンプ部と比較すると、MOS-FETはバイポーラトランジスタに、多重帰還は通常のNFBになっています。MOSFETは電源利用効率が悪いため、電源電圧の限られているSP192ABでは出力を大きくし易いバイポーラトランジスタとしています。また多重帰還は、とても部品点数が多くなるので、シンプルなNFBとし、変わりにアンプゲインを6dBまで軽減しました。
シングルボード・ワイヤ&コネクタレス
完全なシングルボード
SP192ABは、1枚の基板に、全回路・全機能を集積しています。すなわちプリアンプ、パワーアンプ、セレクタ、ボリューム、電源回路、入出力端子、電源端子、操作部、表示部の全ての集積に成功しています。
ワイヤー&コネクタレス
結果、SP192ABはシングルボード化でSP端子部を除き、ワイヤコネクタを全廃。放熱効率、信頼性を大幅に向上させています。
4層ガラスエポキシン基板
プリント基板は、4レイヤーガラスエポキシン基板で、内層2プレーンと表裏の空きエリアを使い、電源やグラウンドを大面積(低インピーダンスで)、かつ理想的に引き回しています。また表裏の表面層には太い電源パターンを引き回さずに済むので、信号線を最短にすることができます。
PCオーディオ時代の厳選パーツ
SMD(表面実装)を更に推進
表面実装化を進め、リード線のインダクタンスの影響を最小化しています。部品の95%が表面実装です。
薄膜抵抗の全面使用
熱変調歪が小さく、エクセルノイズが発生しない薄膜抵抗、金属皮膜抵抗を使用しています。大きなエクセルノイズを発生させるカーボン抵抗は皆無です。(※エクセルノイズ=電流が結晶境界をジャンプする際に発生する雑音で、印加するDC電圧が大きいほど大きくなる雑音)
コンデンサ
信号経路のコンデンサは、DCアンプ化を進めることで最小化していますが、残存するコンデンサは、直線性の良いフィルムコンデンサ(オーディオ帯域用)、C0H/C0Gセラミックコンデンサ(位相補償用)を使用することで、低歪化しています。また電源部などに使われる電解コンデンサは、製品の寿命を左右する重要な部品ですが、最低でも105℃グレードを使用し、高信頼性化しています。
アナログの信号切替はリレーを使用
CMOSスイッチなどはオン抵抗の信号電圧依存があるため、後段をハイインピーダンス・ローキャパシタンスで受けないと大きな歪が発生します。このためローインピーダンス入力の回路ではバッファアンプなどが必要になり信号経路が複雑化してしまいます。そこで、SP192ABはミューティングスイッチにリレーを使っています。
諸元性能
- 定格出力
- :6W+6W (8Ω THD1%)
- 適正負荷
- :4Ω~16Ω
- S/N比 (IHF-A)
- :108.5dB(3W)
- :103.7dB(1W)
- チャンネルセパレーション
- :82.2dB(1W/1KHz)
- 入力インピーダンス
- :10KΩ
- ゲイン
- :29dB
- 周波数特性
- 8Hz~147KHz(-3dB)
- 位相特性
- +22度(20Hz)
- -8度(20KHz)
- 消費電力
- :2.2W (無入力時)/3.5W (電気用品安全法)
- 保護回路
- :過入力(ピンジャック、ミニジャック)、温度、出力短絡、電源極性反転
- 寸法・重量
- :W111.2×H43.6×D120mm(本体、端子部やノブ、スイッチの突起含まず)
- :650g(本体)+220g(ACアダプタ+ACケーブル)
- 付属品
- マニュアル、保証書、専用ACアダプタ
- 歪率
-