DAC+パッシブ電子ボリューム+パワーの
プリアンプレスデザイン
DAC~パワーアンプ・ヘッドフォンアンプの全段で
(1)全段電流帰還型トポロジー(低歪・高S/N・高速広帯域)
(2)全段上下対称コンプリメンタリプッシュプル(低歪・高S/N)
(3)フルバランス伝送
トランスリニア&多重帰還により
A級並みのゼロスイッチング歪、AB級並みの高効率
アイドル電流フィードバック制御
独立した電流帰還ヘッドフォンアンプ
45w+45w/8Ω
90w+90w/4Ω
USB、同軸入力で192KHz/24Bit対応
光入力で96KHz/24Bit対応
DSD256(11.2MHz)対応(Windows/USB)
左右独立、2パラレルバランス型DAC
大容量1.06KW
5次π型フィルタ&ビート除去回路付
6系統独立スイッチング電源
高S/N、高安定、高力率化
6系統リニアレギュレータ
34系統独立電源ラインフィルタ
4系統独立グラウンドプレーン
DAC~パワー総低歪=0.0004%/1W/8Ω/1KHz
DAC~パワー総低歪=0.0008%/1W/8Ω/20Hz~20KHz
DAC~パワー総低歪=0.002%/40W/8Ω/20Hz~20KHz
DAC~パワー総S/N110dB/45W、93dB/1W
430X396.3X117.3mm-10.6Kgのスマートサイズ
機能は、音量、入力切替、アンプリンク、リモコン
無入力時消費電力45.6W
アナログパワーアンプなので
出力レジュアル(輻射雑音)が微小
スイッチモード電源でありながら
A級アンプ以上の高S/N比
入出力コネクタを含め全機能を1組の基板に集積
信頼性の高いデザイン
信号経路がワイヤケーブルを経由しない
ワイヤコネクタの使用数を最小化
マニュアルダウンロード(8.4MB)
技術解説ダンロード(5.2MB)
Windows11動作確認済み
パワーアンプ出力段はA級とAB級がありますが、それぞれ一長一短です。(パワーアンプ出力段以外は負荷が軽いのでA級にするのが常識です)
A級は、スイッチング歪が発生しない反面、常に最大電流の1/2以上のアイドル電流が必要で(55W/8Ω/2CHで270Wの待機電力!)、発熱が大きく信頼性が低く、電源リップルが大きい(電源リップルはアイドル電流に反比例する)などの諸問題があります。弊社は、A級アンプを製品化した他、幾度もA級アンプを経験してきましたが、膨大なコストに見合うかは微妙です。
一方AB級は、アイドル電流が小さく、低消費電力、低発熱、低電源リップル=高S/Nである反面、スイッチング歪が発生します。広域でNFBをかける技術が発達した現代、スイッチング歪はある程度抑えることができる上、A級アンプは現実的ではないので、現在のアナログパワーアンプ出力段の大半がAB級です。
UIA5650のパワーアンプ出力段は、AB級並みのアイドル電流ですが、本来カットオフする側のトランジスタに、微小電流を流し続けカットオフを防止、スイッチング歪を克服します。カットオフせずにスイッチング歪が発生しない点でA級アンプに酷似し、アイドル電流が小さく、高効率・低雑音の観点ではAB級アンプに酷似します。
<アイドル電流はフィードバック制御>
弊社初のA級パワーアンプSP2000同様、トランスリニアアンプにおけるアイドル電流は、フィードバック制御され、温度や環境要件に影響されず安定です。このため、従来のように、パワー素子群とバイアス回路を大きなヒートシンクに集中配置して熱結合する温度補償は不要です。よってUIA5650は、パワートランジスタ毎に独立した基板実装型ヒートシンクとし、絶縁シートを排除するなどして放熱効率を大幅に向上させ、パワー段を大幅に小型化、デザイン面でもスリム化する事に成功しました。
パワーアンプ出力段は負荷が重く、低歪率化するには、パワー素子の超パラレル接続など、物量投入が考えられます。しかしパラレル数を増やすと、前段の負荷が増大して歪が増える上、入力容量も増大するので、位相補償を増やす必要があり、中高域の帰還量が減って歪率が悪化します。
このように超パラレル接続の効能は副作用と相殺され、物量投入の割りに性能向上は軽微です。一方UIA5650は、多重帰還で諸特性を向上させています。まず“トランスリニア・ディスクリート電流帰還パワーアンプ”に局所的フィードバック(NFB1)をかけて歪を低減。更にこれを電流帰還型オペアンプで駆動し、全体で大きなフィードバック(NFB2)をかけます。出力段には (NFB2)と (NFB1)の2つの膨大なNFBがかかり、物量投入せずとも超低歪を達成できます。
パワーアンプ出力保護用のリレーは、微小信号の伝達性能が悪いメカニカルリレーと、大振幅での直線性の悪いソリッドステートリレーを組み合わせて、両者の欠点を補う構造です。
(中央がメカニカルリレー)
(その上下にソリッドステートリレー)
(その上下のコイルはZ補償用)
増幅回路は、電圧帰還型と電流帰還型の2つに分類されます。電流帰還型は、高スルーレートでTIM歪が発生しない、電源変動抑圧比が高い(低雑音)など優れた特徴があります。UIA5650は、DAC~パワーアンプの全段に、電流帰還トポロジー型アンプを導入しています。
電圧帰還型オペアンプの等価回路は以下の通りで、最大電流は、初段の差動回路の電流源で制限されます。この最大電流と出力段の入力インピーダンス(静電容量)で最大スルーレートが決まり、これを超える高速信号を印加するとTIM歪が発生します。スルーレート範囲内の信号であっても、スルーレートと3次高調波歪率は比例関係にあり、高スルーレートほど低歪です。
なお、この回路は電源の+と-に対して非対称回路で、電源ノイズの抑圧比や、スルーレートの対称性(偶数高調波歪の要因)において、上下対称回路の電流帰還型に劣っています。
UIA5650に増幅回路は以下の3通りのみで、DAC~パワーアンプまでの全経路を、高速広帯域の電流帰還トポロジー型・全段上下対称コンプリメンタリプッシュプル・オペアンプで統一しています。TIM歪の要因である最大電流の制限はなく、高いオープンループゲインと少ない位相遅れにより、広帯域で深いNFBをかけられるため超高性能です。パワーアンプの多重帰還出力側は電圧が高いので、前述の通りディスクリート(個別部品)で電流帰還型アンプを構築しています。
電流帰還型の上下対称回路には次のようなメリットがあり、高級オーディオ回路や、MHz帯の高速を要求されるアンプではしばしば用いられます。
これらの回路デザインによって、内蔵DAC ~パワーの総歪は、超高級プレーヤーと、超高級セパレートアンプの組み合わせをはるかに凌駕します。もはや高級セパレートアンプやCDプレーヤーをあれこれ揃える時代は終わったといえるでしょう。
UIA5650はDAC~インスツルメンテーションパワーアンプまでの全経路をバランス伝送化しています。この構造はコモンモードノイズに強く、電源雑音やデジタル部の影響を最小限にとどめます。 (※アナログライン入力にはバランス変換回路が実装されます)
<定格レベルの変化>
プリメインアンプ(プリアンプ+パワーアンプ)は、1980年以前の定格出力である、0.15Vrms程の小レベルを前提に設計され、50dB程度(300x)のゲインとするのが定番です。ところが、CDプレーヤー登場以降、2Vrms程度の機器が大半を占め、2Vrms÷0.15Vrms=22.5dB(13x)ものゲインが無駄になっています。果たしてボリュームを12時以上回すような人がどれだけ要るでしょう。
<古典的なアンプのレベルダイアグラム>
下図は古典的プリメインアンプのレベルダイアグラムです。プリアンプはボリュームと23dBのアンプで構築され、ここにパワーアンプのゲイン26dBを加えた49dBが総ゲインになります。1W再生に必要ゲインは3dBなので、ボリュームを-46dB絞ります。ボリューム後のレベルは0.01Vrmsと微小で、ノイズに弱いです。ほぼスピーカーと同等の電圧を出力しているDACがあるのに、ボリュームで0.01Vrmsまで絞り、その後ゲインを稼ぐ。従来のアンプは無駄だらけです。更にセパレートアンプだと、0.141Vrmsの小振幅信号が引回され、S/N的には尚更不利です。このような古いレベルダイアグラムに固執する限り、セパレートアンプはプリメインアンプより、音質的に不利です。
UIA5650は、無駄なゲインを極力排除した設計で、バランス型DAC → バランス型電子ボリューム → 20.7dBのインスツルメンテーション・多重帰還トランスリニアパワーアンプの3段構成で、実質プリアンプはなく、レベルダイアグラムは以下の通りです。上のアンプと比較すると、最小電圧が0.01Vrms→0.257Vrmsに増大しており、ノイズフロアが同等ならS/N的には28dB有利です。
ボリュームは抵抗式アッテネータを、CMOS(半導体)スイッチで切り替えるパッシブ型電子式でアンプを介しません。これをバランス・パラレル接続とする(8連動)ことで、諸特性を向上させています。可変抵抗を使わないので、配線引き回しによるノイズやギャングエラー、摺動音の問題などが軽減します。
左右独立・バランス・パラレル型のボリューム
(この背面にもボリュームICが並ぶ)
S/Nを左右するので大容量コンデンサによるシャント電源を追加
スイッチングという言葉の印象は、オーディオ愛好家に悪影響を与え、未だに巨大電源への妄信がありますが、多くが主観によるものです。既にスイッチング電源は、従来の古典的電源を遥かに凌ぐ性能を有しています。実際、数mV程のデリケートな微小信号を扱う計測機器でもスイッチング電源で十分なS/Nを確保していますし、D級アンプ(スイッチングアンプ)の普及や、欧州の薄型アンプの普及で、知らぬ間にスイッチング電源が普及しています。まずは固定概念を捨て、電源方式による違いを整理してみます。
古典的電源は大きいだけでなく、負荷変動抑圧比(負荷への電流の変化に伴う出力電圧変動)、入力変動抑圧比(入力電圧変動に伴う出力電圧変動)はほぼゼロと諸性能は良くありません。一方、スイッチング電源は安定化電源であり、負荷変動抑圧比や入力変動抑圧比はともても大きく、出力は安定です。
古典的電源もプリ部やDACはレギュレータを追加し、安定化できますが、電流の大きなパワーアンプ(出力段)は非安定のまま給電します。これらの点で、古典的電源は、スイッチング電源の足元にも及びません。
◆入力変動:スイッチング電源1%以下、古典的電源100%
◆負荷変動:スイッチング電源1%以下、古典的電源100%(※)
(※インピーダンス×電流=物量投入以外に対策方法ない)
唯一の救いであるノイズの小ささは如何でしょうか? 古典的電源では50/60Hzとその倍音で構成されハムノイズが発生し、これらは可聴域の重要な部分に展開され有害ですが、スイッチング電源のノイズは可聴域外にあり、そもそも聞こえません。ビートダウンも考えられますが、その対策方法は確立されており、問題になりません。
更に古典的電源のハムノイズは低周波数なので、低雑音化には物量投入が必要です。つまりコンデンサを大容量化する事になるのですが、するとコンデンサへの充電が大電流・短時間のピーキーなパルス電流になり、いわゆる力率が悪化します。この大電流は配線インピーダンスで電圧雑音に変換され、結局雑音は小さくできません。
交流電源は、常に電圧が変化していますが、この電圧に対し、電流の位相差が力率です。力率が小さいと有効電力が減る、ごく短い瞬間に大きな電流が流れる、交流波形が崩れる、この電流で新たな雑音が発生する、送電設備に負担がかかる、使用電力量以上の電気代がかかるなど、様々な弊害が発生します。力率の求め方は以下の通りです。
緑が電源電圧波形、赤が電源電流波形です。ここで赤の外側にあるa,c,d,fは無効電力で、有効電力はb,eだけで、力率は(b+e)/(a+b+c+d+e+f)で求められます。1が理想で、0は電力を消費できていない状況です。
古典的電源(コンデンサインプット型)は、電源電圧がコンデンサ電圧を越えた瞬間、一気に充電電流が流れ、電源電圧がコンデンサ電圧を下回ると充電電流がゼロになるので、力率は悪いです。ここで、リップル雑音を減らす為、コンデンサを大容量化すれば、電源電流は以下のようになります。
大容量コンデンサはインピーダンスが低いので、より大きな電流が流れ、その分充電時間も短くなり、力率が悪化します。下は実際の電圧-電流波形を比較した様子です。黄赤は大容量コンデンサ、緑黄が小容量コンデンサ、上段が出力電圧(V)、下2段が入力電流(A)です。小容量コンデンサに比べ大容量コンデンサは充電時間が短く、充電電流が大きく力率が悪い事が分かります。また突入電流も、大容量コンデンサのほうが大きく電源設備に負担を掛けます。
弊社パワーアンプSP2000では、問題を軽減するため、整流回路とコンデンサの間にコイルを配置し、充電電流を積分(緩和)する多段式チョークインプット型電源を採用しました。真空管アンプの時代、多く採用された電源形式ですが、トランジスタアンプでは電源電流が大きくコイルが巨大するため殆ど採用されませんでした。真空管アンプの時代ですら、チョークインプット型は巨大なので敬遠されました。
新しいスイッチング電源は、こんな物量投入をせずとも、PFC(力率改善装置)を平滑回路に装備でき、以下のように理想的な電源電流を実現することができます。
そもそもスイッチング電源はノイズ周波数が高い為、小容量のフィルタでノイズ対策できます。UIA5650のパワー段の1KW電源の力率は0.98とほぼ理論値に肉薄しています。以下に古典的電源とスイッチング電源の雑音比較の様子を示します。
オーディオ業界は、何故か力率への言及を避けてきました。それは正しい事でしょうか?
UIA5650には以下の4組1060Wのスイッチング電源を搭載しており、安定した高出力を得る事が出来ます。
◆±36V1000W(パワーアンプ):力率0.98:5次π型フィルタを追加
◆±24V40W(パワー以外全般):力率0.60:5次π型フィルタを追加
◆+5V10W(デジタル部・リレー等):力率0.60:5次π型フィルタを追加
◆+5V10W(待機電源):力率0.60:5次π型フィルタを追加
同等容量(1060W)の古典的電源と比較すると重量はおよそ14%以下で済み、小型軽量です。また電源出力には5次のπ型フィルタをカスケード接続しており、リップル電圧を1/10程に抑圧しています。
高性能なスイッチング電源も回路デザインによっては、うまく機能しません。UIA5650では、以下のノイズ対策を施しており、理論出力55Wながら1W時S/N93dBを達成しています。
(奥の2つのハウジングが1KWスイッチング電源)
UIA5650は、増幅段1段単位でクロストークと雑音を抑えるため、リニアレギュレータ6系統、ローカル電源フィルタを34基配置しています。細かな回路単位で電源を分離することで、クロストーク(回路間の干渉)と電源からの雑音混入を阻止します。
オペアンプの供給電源はスイッチング電源の出力を電源フィルタ→18V→15Vと2段階で落としていく2段安定化電源です。スイッチング電源のノイズを極限に軽減します。
デジタル系、アナログ系、パワー系、電源系の4ブロックに分離したグラウンドによって、デリケートなアナログ回路へのノイズ侵入ループを遮断します。電源、グラウンドは大面積のベタ配線でインピーダンスも最小です。
巨大電源、超パラレル接続、アイドル電流増、巨大放熱器・・・高性能アンプは巨大で重いのが当然でした。さぞパワーアンプにかかる負担は途方もないように思われがちです。ところが、ホームオーディオにおけるピークパワーは1W~10W程、平均パワーは0.1W~1W程にすぎません。またスピーカーのインピーダンスは低域や高域で上昇し、f0(共振周波数)付近の低音再生に必要なパワーはより小さくて済みます。よってパワーアンプにかかる負担は以外と軽く、一般的なホームユースで巨大アンプのリソースを使い切る事はまずありません。
ピークパワーと平均パワーの比率を、クレストファクタと呼びます。サインウェーブでは1.4ですが、音楽信号や音声は、ほぼ10です。つまり音楽信号はピークが一瞬で、大半が微弱信号です。このことは大変重要で、電源や放熱器には積分作用があり、ピークパワーではなく、平均パワーによる設計が可能だからです。もし連続サインを禁止(クレストファクタ1.4)すれば、パワーアンプの電源や放熱器は、ピークパワーの1/10程度に小型化できるのです。
UIA5650は、ある程度の余裕うは持ちつつも、過剰な余裕を廃すことで、スマートで軽量なアンプにすることを心掛けました。
(※レベルメーターは、ピークに対し、緩やかな時定数(250msec~1sec)を持つので、平均パワーが過剰に表示される)
DACの雑音は、内部インピーダンスと周波数帯域に比例しますが、モノリシックICである以上、インピーダンス低減には消費電力上の限界がありサンプリング周波数(帯域)が決まると、S/N=分解能の物理限界が決定します。既にオーディオ用DACは2002年頃に性能が行き詰まり、物理限界に肉薄、DACを乗せて陳腐化する次代は終わっています。よって24bitや32BitDACであっても、実効性能は14-18Bit程度、24-32Bitは言葉遊びに過ぎません。実際32Bit精度に必要な雑音歪率は-194.4dBと天文学的数値であり、現状は遠く及びません。定格の2Vrms超の電圧でS/NのSを稼げば、見かけのS/Nは大きくできますが、雑音電圧に進歩は見られません。
DAC搭載の音質的メリットはアンプ数を減らせ、無駄な引き回しがなくなる点です。高インピーダンスボリュームの駆動には、前段にバッファを配置するのが理想ですが、DAC搭載なら、それ自体がバッファーの役割を兼ね、専用バッファーは不要です。また増幅回路構成を全段で揃える事で、アンプの音質方向性を揃えることもできます。
DACをパラ接続すると、S/N比は“20Log√パラ数”改善します。これは全域で均一なスペクトルを有するホワイトノイズ等に対してのみ有効で、特定周波数にピークを持つノイズには無意味です。またDACのパラレル数を過剰にすると、次段のI/V(電流→電圧)変換アンプの電流がパラレル数だけ増大して(負荷が重くなって)歪が増大します。元来DACの出力電流は大きめなので、パラレル数は控えめにすべきで、よって2パラ接続としました。
DACは左右に1チップづつ使った、2パラレル・左右独立構成です。使用デバイスは、以下の理由でPCM1796です。
左右独立・2パラ・バランス型のDAC
UIA5650は、全回路・全機能を、ほぼ単一基板に集積しており、配線の引き回しは最小です。特に電流の大きなスピーカー端子も、オンボード、バスバー結線とすることでワイヤ配線を廃止して、電流供給能力を高めています。
1KWスイッチング電源との入出力、フロントのコントロール部分にのみわずかな配線は残りますが、DAC~スピーカー端子まで、ワイヤ配線の引き回しは皆無です。
プリント基板は、4レイヤーガラスエポキシン基板で、内層2プレーンと表裏の空きエリアを使い、電源やグラウンドを大面積(低インピーダンスで)、かつ理想的に引き回しています。また表裏の表面層には太い電源パターンを引き回さずに済むので、信号線を最短にすることができます。
表面実装化を進め、リード線のインダクタンスの影響を最小化しています。部品の98%が表面実装です。
熱変調歪が小さく、エクセルノイズが発生しない薄膜抵抗、金属皮膜抵抗を使用しています。大きなエクセルノイズを発生させるカーボン抵抗は皆無です。(※エクセルノイズ=電流が結晶境界をジャンプする際に発生する雑音で、印加するDC電圧が大きいほど大きくなる雑音)
一部のコンデンサは直線性が悪く、大きな歪が発生します。UIA5650は以下の方法で、コンデンサによる音質劣化を回避しています。
■ DC精度の高いオペアンプをバランス構成とし、DCアンプ化(低オフセット電圧化)。
■ 前記により、カップリングコンデンサを1箇所に集中、直線性の良いフィルムコンデンサを使用。
■ 位相補償など小容量コンデンサは、直線性の良いC0H/C0Gセラミックコンデンサを使用。
電源コンデンサに要求される性能は、ESR(抵抗成分),ESL(インダクタンス成分)が低く(=低雑音)、寿命が長いことです。電子機器の寿命を左右するのは、電解コンデンサなので、高信頼性品を使うようにしています。
■ 電解コンデンサは、最低105℃グレードとし、スイッチング電源を考慮した低ESR/低ESL品。
■ 電解コンデンサのESL(インダクタンス)の影響をキャンセルするため、
積層セラミックコンデンサをパラレル接続。(※フィルムコンデンサはESLの大きなものが多い)
<ディスクリート>
信号経路に使用しているダイオードやトランジスタは、超低雑音・電極間容量(Cob)の小さいものを厳選、SMD化(表面実装)も進めインダクタンスを軽減しています。
<デジタル>
可能な限り多くのロジックを、1FPGA、1マイコンに集積します。これはデジタル部を最小の面積にまとめることで、レジュアル(輻射雑音)、ノイズループの悪影響を最小にするためです。
CMOS(半導体)スイッチはオン抵抗の電圧依存があり、後段をハイインピーダンス・ローキャパシタンスとしないと大きな歪が発生します。このためインピーダンスが低めのボリューム前段に配置される入力切替部(DACとLINEの切替)にはCMOSスイッチではなく、リレーを使います。
UIA5650はマルチアンプ、マルチチャンネルサラウンド、AVユース等を視野に入れており、最大5台を10チャンネルを連動できるアンプリンクを搭載します。複数台のUIA5650を連動させた場合、マスター設定されたUIA5650が、残りのUIA5650をコントロールします。アンプリンクケーブルは以下のようにディージーチェーン接続とします。(UIA5650で3台以上のアンプリンクを行うにはオプションのハブが必要です)
DSU6200はマルチチャンネル出力を2ch毎に独立してPCM光デジタル出力するMLD機能を搭載しています。ここにfoobar2000のチャンネルデバイダプラグインにより周波数分割された信号を割当て可能で、下のようなデジタル接続によるマルチアンプを構築できます。(チャンネルデバイダプラグインの使い方は PURE SPEEDのWebサイトのfoobar2000パーフェクトガイドをご参照ください)
DSU6200はMLD機能に、DolbyDigitalやDTS等マルチチャンネルサラウンド音声を最大8CH割当てられます。DolbyDigitalやDTSの基本は5.1chで、ここからスピーカーを増やしていきますが、ピュアオーディオスピ―カーなら、音像定位が良いのでセンタスピーカーは不要で、高品位な低音再生ができるのでサブウーハーも不要です。5.1chからサブウーハーとセンタースピーカーをなくし、これらをフロントスピーカーにダウンミックスした再生方法を4.0chといいますが、以下は4.0chサラウンドシステムをDSU6200とUIA5650で構築した場合の構成図です。
ピュアオーディオとAVの融合
USB、光デジタル2系統、同軸デジタル2系統、アナログラインの全6系統の入力を有しています。
ヘッドフォンには専用の電流帰還型パワーアンプを搭載。スピーカー系と同様、ボリュームバッファーとの組み合わせでインスツルメンテーションパワー構成になるよう設計されています。
定格出力
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45W+45W (8Ω)
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---|---|
入出力
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光デジタル入力x2
同軸デジタル入力x2
USB入力x1
ライン入力x1
スピーカー出力x1
ヘッドホン出力(6.3φ-3極TRS)x1
アンプリンク端子x1
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定格入力
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2Vrms(ライン)
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入力インピーダンス
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12.75KΩ(ライン)
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ゲイン
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18.7dB(ライン→スピーカー)
10.9dB(ライン→ヘッドホン)
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S/N比(IEC-A)
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93dB (光入力・1W)
110dB (光入力・45W)
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ダンピングファクタ
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88
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サンプリング周波数:光、同軸、USB
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44.1/48/88.2/96/176.4/192KHz(16/24Bit)(PCM)(2CH)
光で176.4KHz/192KHzは動作保証外。(相性問題があります)
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サンプリング周波数:USB
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2.8224MHz(1Bit)(DSD64)(2CH)
5.6448MHz(1Bit)(DSD128)(2CH)
11.2896MHz(1Bit)(DSD256)(2CH)
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周波数特性
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3Hz-45KHz (-3dB)
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位相特性
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20Hz (+8.9°)
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機能
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アンプリンク、リモコン
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電源電圧
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100~240V(47-63Hz)
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消費電力
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45.6W(無入力時)/176W(電気用品安全法)
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寸法・質量
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W430×D396.3×H117.3mm(端子・ノブ含まず)
W430×D447.0×H117.3mm(端子・ノブ含む)
10.6Kg
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光→スピーカー
光→ヘッドホン
性能にはバラツキがあります。
上は代表値です。
DAC部分は基本通り、I/V変換部、ローパスフィルター兼差動合成で成り立っています。その後、リレー式のライン入力のセレクターを経て、パラレル・バランスボリュームに入ります。ボリューム次段は電子ボリュームの歪を抑える為、高インピーダンスで受けないといけないので、インスツルメンテーションアンプで差動合成した後、トランスリニア・多重帰還パワーアンプに入ります。ヘッドフォンアンプはインスツルメンテーションアンプの2段目で独立したアンプを設置しています。これら全段を電流帰還トポロジー・上下対称コンプリメンタリープッシュプル回路で統一しています。また全てのアンプ個別にリップルフィルターを配置、電源変動抑圧比を高め、電源ノイズ干渉を軽減します。巨大なスイッチング電源は、入出力をフィルタ-群で高周波的にアイソレート。容量の大きい電源なので、突入電流を抑制するため、2ステージのパワーアップシーケンスを搭載。シャットダウン時には、設定データをフラッシュメモリに記憶するためのシャットダウンシーケンスを搭載しています。
このアンプは、製品発表のおよそ約半年前(2023.7)からバックオーダーを頂いて開発されました。またオーディオアンプ出力段用MOS-FETの入手難から、代替構成を考える必要がありました。MOS-FETのように、スイッチング歪が小さいAB級パワー段として、トランスリニアバイアスのアンプは以前から、実験を繰り返していましたが、非対称なカレントミラー群で構築する難易度ゆえに(長期安定性や信頼性面で満足な性能に達していない)躊躇していましたが、今回ようやく実現にたどり着きました。トランスリニアが達成できれば、低Gmで局部帰還の小さいMOS-FETよりも、高Gmで局部帰還の大きいBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)のほうがより低歪で、そうした観点でも大きな進展でした。高価格帯のプリメインアンプなので、技術的に選択の自由度が高く、スイッチング電源の高性能化を追求しました。完成した電源の雑音性能、安定性、力率、効率は今後のベンチマークにしていきたい程のスペックです。デザイン面ではとにかく薄くしたかった・・・やはり背の高いアンプは、おデブさんに見えて恰好悪いですから。その点でもトランスリニアと多重帰還、スイッチング電源は大いに有益だったと考えます。従来の価値観に基づくアンプ設計は、もう半世紀近く繰り返され、市場にも溢れかえっていますから、それを無名の弊社がやっても意味ないですから、変えるべき部分は変えていこうというコンセプトです。ただし変える必要のない部分、例えば上下対称回路とか、独立電源とかは、やはり効能が大きく保守継承して設計されました。